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第8回松尾芸能賞


大賞 演劇 市川猿之助 歌舞伎の新作が渇望されている時期に登場した「ヤマトタケル」は、新しい様式で創造した新々歌舞伎として、昨年度の演劇界に大きな波紋を投じた。この壮麗なドラマは、主にすぐれた演出力と、劇的アンサンブルを示して、今後の歌舞伎の在り方の一つの道標となった意義は高い。
優秀賞 邦楽 杵屋佐登代 四世杵屋佐吉の高弟として、早くからその天分を表し、現在長唄唄方最高峰のひとりとして活躍している。四世佐吉の数多い作品を初演し、又その継承のための努力にも見るべきものがある。女流長唄家の世界に閉じ込もらず、男声と共演して互角にうたうことを最初から実践し、最近のリサイタルの佐吉作品「黒塚」でも充分に成果を示した。
優秀賞 舞台技術 八木源太郎 京都に春を呼ぶ「京おどり」から何千人が一時に出演する伝統行事「時代祭り」に使用するかつらの製作には、莫大な経費と労力が必要である。これは、誰かが請負わねばならぬ難事業であるが、八木家が昭和27年以来京都市のため舞踊界のためと、採算抜きで引受けてきた功績は大きい。亡き師匠の遺族の方々の面倒、同業者や友人の生活を見るなど、技術と人情兼備の人物である。
特別賞 邦楽 富山清琴 地歌箏曲演奏家の第一人者で、特に三味線歌曲である「地歌」の専門家として名高い。その芸域はきわめて広く、語り物の「繁太夫物」や戯けた「作物」などには特に独自の境地がある。歌、三絃、箏、胡弓全てに名技を示し、また地歌舞の地方としての活躍も特筆すべきである。重要無形文化財保持者で、後進の育成にも力を尽くしている。
特別賞 演劇 日本ろう者劇団 代表 米内山明宏氏 日本の古典芸能の狂言を、ろう者が手話によって演じるのは、画期的な方法である。日本ろう者劇団のメンバーは、その障害をのり越えて、すぐれた成果を示すまでに、わずかな期間に成長をなしとげたのは、厳しい訓練の成果として大いに認められる。
新人賞 邦楽 畦地慶司 日本伝統楽器である胡弓の若手演奏家である。本来は箏曲家として出発し、現代邦楽の日本音楽集団で胡弓奏者としての地歩を固めた。東洋各地に広いつながりを持つ胡弓の国際性に注目し、その視点から日本音楽の未来を考えるという立場に立って、作曲、演奏、講演や後進指導に至るまで、その活動は近来ますます注目に値する。