松尾塾伝統芸能を開塾して、初めて知る単語がこれまでありましたが、今回の稽古でも一つ発見がありました。
長唄の時間で「末広がり」という曲を稽古していますが、狂言で「末広がり」というと、とても身近な物を指す名称でした。
もともとの意味は“末のほうへいくに従って広がっていること。次第に栄えていくこと。めでたい意にも用いる(大辞林 第三版)”そうなのですが、狂言の「末広がり」は・・・。「扇」のことでした!
今回の狂言の時間では、内藤 連先生が、先生ご自身が本番の舞台で使用している扇を特別に見せてくださいました。近くでなかなか見ることのない扇に、塾生達はもちろんのこと、保護者の皆様も興味深そうに拝見しました。
狂言で使用される「扇」には2種類あり、地の色が金のものと、鳥の子色(クリーム色をもう少し黄色くした感じの色です)があります。描かれる絵は桜などの季節の植物、魚などの生き物など様々だそうです。
「金色の扇はお能の人も使いますが、鳥の子色は狂言方だけが使います。」
「扇は御目出度い時の贈り物として贈られることがあります。
さて、お祝いの時に贈られる扇は金色、鳥の子色、どちらでしょう?・・・・正解は金色です。」
「扇を逆さにして持つと、何に見えるでしょうか?・・・漢数字の八ですね。 裾が広がり、栄えていくというイメージの形ですね。このことから、狂言では扇のことを“末広”と呼びます。いただいた扇は熨斗(のし)をかけた箱に大事にしまって保管します。」
内藤先生が良く舞台で使う扇は瓢箪の絵が描いてある扇。その他、野村萬斎先生からいただいた蛸の絵の扇や、表に鮎、裏に鮎釣りの時の仕掛けが描いてある扇など、一つ一つの扇にとても繊細な絵がほどこされています。
素材は和紙と竹だけの自然な素材の扇が、時には傘になったり、盃になったりと、変幻自在に用いられ、使用する時のお作法もあり、演目や役柄に応じて扇を選ばれるなど、知れば知るほど奥が深いなと思いました。