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第40回松尾芸能賞

大 賞 能楽 野村萬 狂言界に古典的風格を保ちつつも近代的な洗練された演技で新風を吹き込み、常に第一線で活躍してきた。一方、日本の、洋の東西を問わないすべての芸能を組織している日本芸能実演家団体協議会(芸団協)の会長を1997年から努めている。会長として、日本の芸能全般にわたって広く見渡し、これらの団体の交流や著作隣接権の問題など芸能実演家たちの地位の向上や日本の文化の発展のために骨身を惜しまず活動している。
優秀賞 邦楽 杵屋東成
杵屋勝禄
江戸長唄三味線方の杵屋勝禄の家に双生児として、大阪に生まれた兄弟。同門の仲間、またライバルとして修業を重ね「禄三禄宣」と併称されるほど名コンビとなる。兄は美声に磨きがかかり歌舞伎や舞踊会で珍重され、弟の鮮やかな撥さばきも高く評価され、名古屋踊り作曲や京都花街での指導など両人とも東奔西走の時代を迎えた。1998年、兄は二代目杵屋勝三郎の俳号、東成の二代目、弟は父、勝禄の名の二代目を同時襲名し、以後、ふたりで、あるときは単独で立唄、立三味線として東西の舞台で演奏を続けている。2018年はともに古希を迎え、別々に盛大な記念演奏会を開き成功裏に終えた。
優秀賞 歌謡 氷川きよし 2000年「箱根八里の半次郎」でデビュー以来、数多くのヒット曲を世に送り出し、発売したシングル盤CDは全てヒットチャート誌ベストテン入りのこの記録は、演歌・歌謡曲歌手では唯一人である。毎年50回近くの全国コンサートツアーを開催し、全会場を満席にする人気を保持し、歌謡界のトップランナーとして走り続けている。また、明治座での1ヶ月座長公演をつとめ、芝居と歌の公演を完売する力量を示している。
優秀賞 舞踊 藤間勘十郎 格調高い典雅な踊りと名振付師だった祖父・宗家藤間流六世宗家、母の七世宗家のもとで研鑽を重ね、日本舞踊家、歌舞伎舞踊の振付師として時代を担う活動が目覚ましい。歌舞伎舞踊の振付は母との共同で年間50本を超す。谷崎潤一郎原作「恐怖時代」を巧みな脚本・演出で見事に舞踊化し、「凄惨四谷怪談」舞踊化では構成演出と5役で出演した。多芸多才な活躍は21世紀日本舞踊の豊かな可能性を展望させる。
新人賞 能楽 宝生和英 室町時代からの伝統ある宝生流の家に生まれ、二十世宗家を若くして継承以後、その責務を果たすべく様々な取り組みに邁進してきた。一子相伝の秘曲への挑戦、異流共演、復曲能への参加、海外での公演やワークショップ、邦楽や日本舞踊との共演、一門の力を結集して子供達への能楽普及活動など活躍はめざましい。宗家継承10年の2018年は大曲「道成寺」を連続して勤め、舞台成果と伝統を尊重する真摯な姿勢が高く評価される。
新人賞 演劇 中村壱太郎 史上最年少の16歳で「鏡獅子」を踊って以来注目が集まり、2010年には「曽根崎心中」のお初に役柄と同じ19歳で挑んだ。上方歌舞伎の若手女方として近年の成長は著しく、「心中天網島」の小春などの上方歌舞伎から、「於染久松色読販 お染の七役」の江戸歌舞伎まで幅広い役柄を手掛ける。2018年には新派の名作「滝の白糸」を「お染の七役」同様に五代目坂東玉三郎の指導で演じ新しい役どころも積極的に挑戦している。
特別賞 演劇 ひとみ座乙女文楽 「一人遣い」の特殊な技術・技法と演出法に工夫と考案を重ねながら独自の操法を案出し、洗練度を加えながら今日に至り、乙女文楽結成五十周年記念公演「奥州安達原 袖萩祭文の段」では、長年にわたる豊かな経験と蓄積された技芸力を遺憾なく発揮した。乙女文楽初発の指導者、故 桐竹智恵子の芸の継承発展に努めてきた活動は高く評価されるとともに、我が国人形劇界のユニークな存在として今後一層の発展が期待される。
松尾國三賞 演劇 市川寿猿 芸歴は80年を超え、四世代に亘る澤瀉屋一門の名脇役として、古典はもとより新作、舞踊、猿之助歌舞伎、スーパー歌舞伎、スーパー歌舞伎Ⅱと代々の猿之助が拓いてきた多彩な歌舞伎を支え、老若男女の様々な役を演じて舞台を盛り上げてきた。最古参として若手の多い一門の俳優の指導役を果たすと共に、現役としても若々しい演技を見せ続けている。年輪を重ねた自在な芸が光り、歌舞伎界へ大きな功績を残している。
松尾波儔江賞 演劇 中村寿治郎 芸歴は60年を超え、成駒家一門が得意とする上方歌舞伎に欠かせない脇役として活躍してきた。役の生活感を出す演技が求められる上方狂言で「曽根崎心中」「廓文章」など当たり役も数ある。古典の役から新作の役に至るまで、それぞれの役に相応しい演技を工夫して主役を支え、上方歌舞伎独自の可笑しみ、渋み、味わいをだして舞台を盛り上げてきた。上方歌舞伎の伝承と発展に多大な貢献をしてきた功績は大きい。