大賞 | 能狂言 | 野村萬斎 | 狂言師としての活動はもとより、2002年から20年間に亘り世田谷パブリックシアターの芸術監督として現代劇のほか「MANSAI◎解体新書」「現代能楽集」「狂言劇場」など多くの優れた企画を立てて上演し、古典芸能と現代演劇の融合と発展に大きな功績を残した。テレビの子供番組やドラマ、映画でも活躍し、狂言を軸として各ジャンルにまたがる幅広い業績は他に例がなく素晴らしいものがある。 |
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優秀賞 | 邦楽 | 菊原光治 | 1966年に18歳で大阪の地歌箏曲演奏の第一人者・菊原初子(後に人間国宝)に入門。上方独特の風情、香も吸収し、野川流三絃組歌32曲・古生田流箏組歌49曲の全曲習得、巻物を伝授された。「ゆき」「浪花十二月」をはじめとする名演奏の数々で地歌箏曲の演奏家としての評価は極めて高く、門下から時代を担う演奏家たちが巣立っている。上方芸能の貴重な地歌箏曲演奏家である。 |
優秀賞 | 落語 | 春風亭小朝 | 1980年に25歳の若さで真打昇進。先人の高座を学びながら洗練されたセンスで伝統と現代を結びつけた。2004年から5年間は「大銀座落語祭」をプロデュースし、東京と上方、会派 等の垣根を取り払ったプログラムで新しい落語ファンを創出した。近年は三遊亭圓朝作品に手を入れて口演する等、意欲的な高座がめざましい。高い芸位を示し、かつ落語界を長きにわたって牽引した功績は大きい。 |
優秀賞 | 演劇 | シルビア・グラブ | 1997年に「ジェリーズ・ガールズ」で本格舞台デビュー。以来、ミュージカルを中心にストレート・プレイから映像まで、女優としてコンスタントな活躍を見せてきた。圧倒的な歌唱力と都会的なコメディセンスで様々なジャンルの作品に出演し、演じてきた役柄も実にバラエティに富んでいる。作品が求める役になりきる演技力も魅力である。ミュージカル「日本の歴史」では、卑弥呼から織田信長まで7役を演じ分けた。 |
優秀賞 | 舞踊 | 尾上菊之丞 | 父・三代家元(現 尾上墨雪)に師事して5歳で初舞台を踏んだ。2011年に尾上青楓から三代目尾上菊之丞を襲名すると同時に四代家元を継承。以来、尾上流ゆかりの舞踊作品の振付にとどまらず、新作歌舞伎、宝塚歌劇団の振付、狂言と舞踊のコラボを共催。2021年は映像配信「地水火風空そして、踊」の作・演出に加え、映像を駆使した花街舞踊の演出・振付など、時代に対応した多彩な活動で日本舞踊界の発展に寄与している。 |
新人賞 | 演劇 | 坂東巳之助 | 十世坂東三津五郎の長男として生れ1995年に二代目坂東巳之助を襲名した。たゆまぬ精進と努力を重ね地道な実力をつけてきた。新作歌舞伎の印象も強かったが、この数年は古典歌舞伎で著しい成果を見せている。役柄も多彩で難しい二枚目から荒事の骨法を踏まえた役まで鮮明な印象を残している。2021年は「寿曽我対面」曽我五郎時致で見事な口跡と格調ある演技でその抜群の資質が改めて注目された。 |
特別賞 | 演劇 | 伊東四朗 | 出色の喜劇役者として人気と評判が高く、舞台、テレビ・ラジオ、映画、CM等多彩の活躍は枚挙に暇なく現在なお進行形である。戦前戦後の日本喜劇人列伝に揺るぎない地位を占めるに至り、自らも<生涯喜劇役者>を標傍し、その役柄には滑稽味と哀愁、リアルとシリアスの存在感を醸し出せる名優である。2021年2月『伊東四朗生誕?!80+3周年記念「みんながらくた」』の舞台はまさに喜劇役者の至芸であった。 |
功労賞 | 演劇 | 坂東竹三郎 | 上方歌舞伎の貴重な伝承者として幅広い役柄に取り組んできた。大阪に本拠を置きながらも東西の舞台で活躍している。花車方で情愛溢れる老け女方が代表だが、時には静御前など姫役を務め、骨太な立役、敵役、あるいは道化がかった脇役にも定評がある。実直な人柄と後輩への熱心な指導で多くの俳優から慕われている。90歳を迎え、なお現役として舞台に立ち続けていることを高く評価したい。 |