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第41回松尾芸能賞

大賞 邦楽 宮田哲男 長唄の唄方として天性の美しい声は、東京藝術大学邦楽科に在学中から長唄界の人々だけではなく他分野の人々からも高く評価されている。その声は80歳半ばの現在でも失われず、スケールの大きい豊かな表現力は深みを増している。多くの門弟たちを育て、長唄界のみならず邦楽界に大きく貢献している。
優秀賞 文楽 鶴澤燕三 文楽三味線方として初舞台から40年を越え、現在では切場語りで人間国宝 豊竹咲太夫の三味線を弾き大曲に取り組む機会も多く、地道で着実な舞台成果を上げている。新曲、復曲の手付にも功績を残し「摂州渡辺橋供養・橋供養の段 」や毎年祇園「都をどり」の作曲、近松門左衛門「出世景清」では全段を復曲し大きな成果を上げた。
優秀賞 舞踊 井上葉子 父に文楽太夫、母に小唄師匠をもち、3歳で京舞井上流に入門、17歳で名取りとなる。流儀の代表曲を次々と舞いあげ、2019年「竹生島」で琵琶湖を渡る船の道行に曲趣の精髄を示し、芸の成熟を感じさせた。同年、義太夫「芦刈」で出色の輝きを見せ、浄瑠璃詞章では女の物語が進行、舞の表象は男舞という至難の業を結実させた。この先の飛躍的発展が秘められている。
優秀賞 演劇 明日海りお 2003年 宝塚歌劇団に入団し、新人の頃から歌、演技、ダンスの三拍子揃った逸材として注目を浴びてきた。月組準トップに就任した2012年以降は、「ロミオとジュリエット」のロミオ、「ベルサイユのばら」のフェルゼン、花組トップスターとなった2014年以降は、「エリザベート」のトート、など大役を次々に演じ、花組のみならず宝塚歌劇団を牽引した。華やかな風姿と爽やかな演技はファンだけでなく一般観客を魅了した。
新人賞 演劇 中村梅枝 五代目中村時蔵の長男として生まれ、美貌の若女方として古典の大役を次々に演じている。2018年には五代目坂東玉三郎の指導のもと「壇浦兜軍記 阿古屋」を初演し、次々に大役を演じて一層の進境を示した。若手に逸材の多い歌舞伎界の中でも出色の活躍ぶりで、艶やかで華にある舞台姿と弛まぬ努力は今大きく花開こうとしている。
新人賞 歌謡 中澤卓也 2017年1月「青いダイヤモンド」でデビューするや、その年の日本有線大賞有線奨励賞、日本レコード大賞新人賞を受賞した。「ミラクルボイス」と呼ばれる音色と美声、抜群の歌唱力で大勢の歌謡ファンを魅了している。第2弾のリリース曲「彼岸花の咲く頃」は、かつてのフォーク、ニューミュージックを感じさせ、演歌、歌謡曲部門の次世代を担うホープとして期待を一身に集めている。
特別賞 邦楽 栄芝(春日とよ栄芝) 27歳で小唄、春日とよ栄芝の名を許されてから頭角を現し、栄芝名で端唄の一流も立て、自身の「栄芝会」は昨年で60回開催を数える。リサイタル「栄芝の會」も35年連続開催し、小唄端唄界の第一線で活躍し続けている。天性の美声に加え歯切れの良さや情緒、深い作品理解から「栄芝節」ともいうべき芸風を確立している。流派の枠を超え邦楽界を代表する実力者である。
功労賞 邦楽 藤舎呂浩 広く三味線音楽囃子方として活躍しているが、とりわけ京都・大阪を中心に上方舞における囃子に精通し、故実にもたけて造詣が深く、経験・知識・技芸の豊かさによって、今や上方舞各流会派の舞踊家ならびに地唄、上方唄 等、音楽家の生き字引である。「舞の会」等の囃子方責任者として舞の精髄を舞台に展示することに心を砕き、上質の舞台成果に大きく貢献している。