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第39回松尾芸能賞

大 賞 演劇 坂東 玉三郎 10代後半から美貌の若女方として頭角を現し昭和50年代は、現・十五代目片岡仁左衛門(当時・片岡孝夫)と「孝玉ブーム」を巻き起こした。歌舞伎界の立女形として、新派やシェイクスピア作品で多彩な役を演じ、歌舞伎を世界の演劇に押し上げた。幅広いジャンルの舞台に出演し、現代演劇、レビュー、太鼓などの演出や映画監督も手掛け世界に誇るアーティストとして活躍している。なかでも平成29年は「井伊大老」お静の方、「沓手月孤城落月」淀の方、「瞼の母」のおはま、「楊貴妃」で女方の至芸を見せるとともに、若手の指導やシネマ歌舞伎も手掛け歌舞伎の伝承と普及に大きな功績を上げた。
優秀賞 舞踊 猿若 清方 第71回「猿若」の会(平成29年国立小劇場)での常磐津「祭りの花笠」は、洒脱の男の姿をすっきりと踊ってみせ、神楽囃子に乗った老爺の趣向は滑稽物真似の中に芸境の熟成を遺憾なく示した。大和楽「江戸風流」では、息子・猿若清三郎の清新さと熟達の呼吸が相応し鮮やかな連舞の妙を堪能させた。江戸庶民の心情と風情を心地よく的確に描出する舞台は出色の出来栄えであった。父・流祖猿若清方の芸と心意気を継いで、その領域をみごとに発展させた芸境の豊かさには目を見張るものがある。
優秀賞 能楽 藤田 六郎兵衛 400年を超す能楽笛方・藤田流を継承する十一世宗家。5歳で初舞台を踏み昭和55年に宗家を継ぎ、名古屋を拠点にまもなく舞台歴60周年を迎える。流儀独特の華麗で鋭く豊かな音色の笛を駆使して各地の能楽公演で演奏する他、能楽普及公演にも真摯に取り組んでいる。ミュージカル出演、オーケストラや洋楽器との共演、和・洋楽のコラボレーションなど多彩な活動を展開し、海外公演や文化庁交流使など国際的にも活躍、世界文化遺産・能楽の普及とアピールに大きな役割を果たしてきた。能楽囃子方に欠かせない笛方として評価は極めて高い。
優秀賞 歌謡 森 昌子 「スター誕生!」の初代グランドチャンピオンとなり13歳にして「せんせい」で歌手デビュー。その後も圧倒的な歌唱力をもって学園3部作、「哀しみ本線日本海」「越冬つばめ」など歴史に残る名曲を次々と世に送り出した。一時、結婚のため引退したが、20年の時を経て復帰を果たすや、ドラマ・映画への出演やナレーターなど活動の場は多岐にわたる。全国80ヶ所以上で開催するコンサートでは、コントで昭和の名曲を綴る新しい形態を取り入れ好評を博す。また、音楽喜劇「のど自慢」では主演を務め、多彩で精力的な芸能活動の評価は高い。
新人賞 舞踊 嘉数 道彦 4歳で琉球舞踊の宮城能造に入門し、8歳で「鳩間節」を踊り初舞台。沖縄県立芸術大学で「組踊」を専攻し、大学院修士演奏では自作自演の組踊「宿納森の獅子」を発表。才能の輝きは注目を集め、平成18年国立劇場おきなわ研究公演に採択され新人組踊作家としてデビュー。以後、新作組踊「十六夜朝顔」「初桜」などの優品が沖縄・東京の国立劇場で初演再演を重ねる。また、沖縄芝居「ぺーちんの恋人」などの劇作・演出を含め30作品余の舞台も成功させた。琉球舞踊家、劇作・演出家、また国立劇場おきなわ芸術監督として、沖縄伝統芸に新生面を拓き新風を送り込んでいる。
新人賞 演劇 尾上 右近 父は七代目清元延寿太夫、曾祖父は六代目尾上菊五郎。平成12年「舞鶴雪月花」松虫にて岡村研佑の名で初舞台。平成17年に二代目右近を襲名。初舞台で切れの良い踊りが高く評価され菊五郎劇団で更に資質を磨き、娘方や若衆を中心に様々な役を演じ花形スターの一人となった。平成27年より自主公演「研の會」をはじめ大役に挑み成果を上げる。平成29年はスーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」では2ケ月間主役を務め、満員の観客から喝采を浴びた。平成30年には父の前名・七代目清元栄寿太夫を襲名し、清元の太夫としても今後の活躍が期待される。
特別賞 演劇 髙田 次郎 昭和20年代より神戸道化座を皮切りに松竹新春座で活躍後、曽我廼家十吾の松竹家庭劇旗揚げに参加。テレビでは舘直志(二代目渋谷天外)や花登筐の作品に多く出演。その後、藤山寛美の誘いで松竹新喜劇に入団。現在は松竹新喜劇を中心に「銀二貫」をはじめ多くの重要かつ多彩な役柄を演じる極めて貴重な存在である。大劇場育ちならではの風格と品格がある一方、庶民的雰囲気も兼ね備え、社長役から商店の旦那衆、しがない芸人まで役柄も広い。主役を引き立てる適格な演技の中で光彩を放つ技芸は見逃せない。また、平成29年は名作「鼓」の主役を85歳で見事に演じきった力量の評価は高い。
功労賞 舞台技術 坂入 清子 新派の魅力・特徴・特質は、時代や地域の風俗を通して人間の生き方、関係、葛藤を感じさせるところである。また、舞台は俳優の身分や相手役との関係を台詞だけではなく観客に直感させる必要がある。その役割を担うのが、装置、衣裳、小道具と並ぶ「結髪」の役割である。坂入清子氏は結髪担当として、今では唯一の貴重な存在である。坂入氏の技術は関東関西に限らず東京だけでも地域による差異を見せ、その役の状況や微妙な機微を表現し新派独自の世界を表出させる。また風俗を通して明治大正昭和に至る時代の違いを表現し、人物の格や身分の差異までも直感させる優れた技を持つ。