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第38回松尾芸能賞

大 賞 邦楽(太鼓) 林 英哲 今や「タイコ」の名で世界に広がっている日本の太鼓音楽の道を最初に切り開いてきた類まれな芸術家である。伝統的な太鼓を楽器としても音楽としても研究し尽くし、大太鼓のソロ奏法、多種多様な太鼓や打楽器も用いた独自の奏法を生み出し、現代音楽の一分野として世界の人々を魅了してきた。その音楽は圧倒的な力強さから快い優しさまで表現は幅広く、これまでの太鼓音楽とは異質な芸術性の高い音楽である。「鬼太鼓座」「鼓童」を経て昭和52年にソリストとして活動を始め、海外公演も多く、各地の交響楽団と共演して現代音楽の分野で高い評価を得ている。
優秀賞 大衆演劇 沢 竜二 昭和49年、演歌劇「夢の渡り鳥」に主演し演劇界を震撼、4編の続編も誕生した。人気旅役者「女沢正」を母にもち、16歳で座長就任。旅役者として人気を博する。昭和39年、船村徹門下として歌手デビュー。森川信氏に見出され昭和42年、「年忘れ喜劇」の出演をきっかけに歌手兼俳優の道を歩み始めた。ドラマ、映画、故・蜷川幸雄氏演出の舞台にも数多く出演し、三度のN.Y公演を始めとする海外公演も成功を収める。沢氏の主宰「全国座長大会」は今夏で30回を迎える。大衆演劇の誇りを保持しつつ映画、テレビ、演劇に邁進してきた長年の功績は称賛される。
優秀賞 舞踊 西川 左近 平成28年、「第15回記念西川左近の会」では、昭和の名人 父 西川鯉三郎氏の傑作 清元「お力」を踊り、父の遺風を継承しつつ女流として独自の左近風を生み出した。そして、素踊りで踊った立役「保名」の成果とともに画期的な公演となった。両親が舞踊家の長女に生まれ、父のもとで内弟子・娘・共演者として研鑽を重ね、創作現場では振付助手も務めた。名古屋に伝わる西川流古曲も伝承し、昭和60年、初代家元として西川流鯉風派を創流する。父 鯉三郎氏の芸風継承と普及に努め「東をどり」の指導・振付も勤めるなど、舞踊家としての円熟を感じさせる。
優秀賞 歌謡 堀内 孝雄 フォーク、ニューミュージック時代のグループ『アリス』結成デビューから45年、ソロ歌手活動に転じて38年間、常に日本の歌謡界の一線で活躍しシンガーソングライターとして多数のヒット曲を出してきた。独特の作風と歌唱で新しいジャンルを拓き、テレビドラマ主題歌は20曲を越える。その中の一つ「恋唄綴り」は日本レコード大賞、日本有線大賞の大賞曲に輝く等、高い評価を受けた。NHK紅白歌合戦出場は17回を数える。一方で他の歌手に提供した楽曲も多く、作曲家とエンターテイナー両面の活躍で独自の世界を構築し、日本の歌謡音楽文化に大きく貢献してきた。
優秀賞 演劇 中村 錦之助 平成28年、正月の新春浅草歌舞伎の若手一座の上置として若い俳優たちをリードして舞台を引締めた。10月から3ヶ月に亘って上演した国立劇場開場50周年記念公演の「仮名手本忠臣蔵」は毎月出演し、それぞれ異なる人間像をみごとに演じ分けた。「二段目」「九段目」の”雪転し(ゆきこかし)”は30年ぶりの上演になったが、良く役を研究して復活上演の意義を示した。この他、義太夫狂言、河竹黙阿弥物、上方狂言など幅広い狂言に出演して、多彩な役を演じ分けたのは特に注目される。中堅世代の俳優として一段と実力を備え今後の活動も期待される。
新人賞 邦楽 鶴澤 津賀花 義太夫節の三味線演奏家は、自分の技術的力量だけでなく語りを担当する太夫の気持ち、解釈を忖度したうえでイキを合わせ、一体となって作品の世界を表現しなくてはならない。特殊で格別な才能が要求され、厳しい長年の修業が重要である。鶴澤津賀花氏は近年、時代物世話物を問わず著しい成長を示し、自身のリサイタルでは、師の人間国宝 竹本駒之助氏の語りで難曲大曲に積極的に挑戦する意欲を持ち、その多彩な活躍と活動ぶりは、これからの女流義太夫を担い進める重要な存在となりつつある。
新人賞 邦楽 遠藤 千晶 平成28年、自らの企画構成で日本フィルハーモニー交響楽団を招き、委嘱作品2曲を含む筝協奏曲3曲と古典の「乱輪舌」を全曲暗譜で堂々と演奏した。一人の筝演奏家がこのような会を催すことは、邦楽界では極めて異例のことである。その意欲と積極性が、古典に裏付けられた適確な技術と優れた現代感覚によって大きく実ってきたことを立証した。また、それぞれの曲の性格をよく受け止めバランスのとれた表現で見事に弾き分け、聴衆に深い感銘を与えた。砂崎知子氏に師事し、東京藝術大学を卒業した後も矢崎明子氏に古典を学び努力を惜しまない。今後が楽しみな存在である。
特別賞 映画 澤登 翠 無声映画の活動弁士として日本の無声映画の時代劇、現代劇そして欧米の洋画など多彩なジャンルにふさわしい語り口をもってその話術、話芸に独自の芸風を開拓した。今や斯界の第一人者として国内外で顕著な活躍を示している。平成28年「第28回澤登翠活弁リサイタル」では、ドイツの大作名画「ファウスト」に活弁円熟の芸境を示して喝采の成果を挙げた。映画史の文化遺産ともいうべき無声映画の文化財的価値を活用し、さらに現代のエンターテイメントに仕立て上げているその力量と才能の魅力は、今日の芸術文化界にとって貴重な存在となっている。