第37回松尾芸能賞

 

大 賞 演劇 平 幹二朗 劇団俳優座座員となって以来、実に60 年。1960 年代までは、俳優座や劇団四季の舞台で、多彩な役柄でスケールの大きい魅力ある演技を展開し、新劇界では数少ない知名度の高いスターとして着目されていた。しかし、そこにとどまることなく1970 年代以後は、蜷川幸雄演出による数多くの作品に出演し、単に「新劇」のジャンルに留まらない無類の表現力を備えた俳優として国際的にも評価されるに至った。その功績は演劇だけでなく、著名監督の映画やテレビに数多く出演し大衆の記憶に残り、前衛と結びつけるという大きな役割を果たした。
優秀賞 邦楽 宮田 まゆみ 雅楽の笙奏者の第一人者で、現在雅楽の演奏団体「伶楽舎」で活動している。宮田まゆみ氏は、若い時から笙を独奏もできる楽器として技法に工夫を加え表現を考えリサイタルを行ったりCD を制作するなど、国内にとどまらず海外でも注目されてきた。最近もアメリカの大作曲家ジョン・ケージが作曲した笙独奏のための超大作「One9」を演奏し、天空からの贈り物のような笙の音に別世界にいるような深い感動を与えた。宮田まゆみ氏は笙のために天から遣わされたような人であり今後の活動も期待される。
優秀賞 邦楽 杵屋 勝四郎 長唄の家に生まれ、師匠にも恵まれてきたが、坂東玉三郎の「蜘蛛の拍子舞」をはじめ歌舞伎舞踊でしばしば立唄をつとめ、艶のあるのびやかな美声で格調高く長唄の魅力を伝えている。そうした舞踊の地方としての活躍にとどまらず、自身のリサイタルでは「安達ケ原」など杵勝三伝の名曲に密度の高い演奏を披露するとともに趣向を凝らしたテーマで長唄への理解と親しみをアピールしている。また、芝居やアニメに作曲で参加、ラジオ出演、CM音楽や創作邦楽、後進育成といった多ジャンルでの幅広い多彩な活動は大きく称揚される。
優秀賞 演劇 一路 真輝 昭和57 年に宝塚歌劇団に入団、ずば抜けた歌唱力で注目を集め、平成5 年に雪組のトップスターになった。平成8 年に「エリザベート」のトートを日本初演して退団した。以後はミュージカルスターとして「王様と私」などに主演してきたが、平成12 年の東宝版「エリザベート」の初演でエリザベートを演じ、男女の主役を1 人で演じる快挙を果たした。一方で「娘よ」など大劇場演劇にも出演し、平成27 年には明治座「春日局」で徳川秀忠の妻お江与、東京芸術劇場でミュージカル「シャーロック ホームズ2」のワトソン、世田谷パブリックシターで「道玄坂綺譚」の小町を演じ、汚い老女が絶世の美女に変貌するという至難の役だが、見事に造形し新しい芸域を拓いた。
新人賞 演劇 尾上 松也 六代目尾上松助の長男で、平成2 年5 月歌舞伎座「伽羅先代萩」の鶴千代で二代目尾上松也を名のり初舞台。以後、父の所属する菊五郎劇団で修業し、すらりとした姿態と整った顔立ちを活かした娘役として活躍してきた。近年は立役にも芸域を広げ、「寿曽我対面」の曽我五郎など大役に起用された。一方で蜷川幸雄演出「騒音歌舞伎 ボクの四谷怪談」など歌舞伎以外の舞台にも出演し、多くのファンを集めた。平成26 年の「四国こんぴら歌舞伎大芝居」で「加茂堤」「車引」の舎人桜丸、「寺子屋」の武部源蔵、渋谷・コクーン歌舞伎第十四弾の「三人吉三」のお坊吉三、平成27 年には新春浅草歌舞伎の中心メンバーの一人として出演し「仮名手本忠臣蔵五段目・六段目」の早野勘平、ミュージカル「エリザベート」のルイジ・ルキーニを演じるなど花形スターの地位を確立した。
特別賞 舞台美術 鳥居 清光 浮世絵鳥居派の画系を伝えるただ一人の継承者である鳥居清光氏は父の鳥居派八代目 五世鳥居清忠の画室で幼少から身近に接し、東京藝術大学日本画科を卒業後、父の助手をつとめて本格的に画法を学び、五世清忠の没後、昭和54 年4 月に歌舞伎座の絵看板を初めて手掛け、以来37 年間にわたって歌舞伎座の絵看板を描きただ一人守り続けている。昭和57 年11 月に鳥居派の長い歴史で初の女流浮世絵師として九代目を襲名。とりわけ女性にとって大変な肉体労働に耐え、歌舞伎の絵看板という伝統を努力と情熱をもって維持してきた。
功労賞 能楽 富山 禮子 600 年以上の歴史をもつ能楽は女人禁制の歴史が続く男性社会であったが、平成16 年富山禮子氏は初めて、女流能楽師22 人の重要無形文化財総合指定保持者の一人として認定された。梅村平史朗逝去後、金春流の先代 七十九世宗家 金春信高に師事し、シテ方能楽師の困難な道を歩んできた。たゆまぬ努力で女流能楽師のパイオニアとなり端正で気品あふれる能への評価は能楽界でも高い。女性で初めて三老女の一つ「伯母捨」を許された女流能楽師の最長老にとどまらず、女流の地位向上、後進の育成にも大きな貢献を果たしてきた。
研修助成賞 大衆芸能 お笑い浅草21世紀 お笑い浅草21 世紀は社団法人日本喜劇人協会の九代目会長をつとめたコメディアンの故・橋達也を初代座長に平成10 年に結成された。かつて浅草が生み出したエノケンたちの東京喜劇、浅草軽演劇の灯の復活を旗印に18 年間の長きにわたって浅草・木馬亭を本拠に毎月の新作喜劇を上演し続けている。橋座長の死後、大上こうじ座長のもと劇団活動を展開しているが、平成16 年のエノケン生誕100 周年記念公演「君恋し」が文化庁芸術祭で大賞を受賞するなど評価も高い。

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