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第10回松尾芸能賞


大賞 演劇 中村扇雀 広い芸域の立役、女方にすぐれた技芸を見せている。上方和事の伝承者としての活躍を評価して。
優秀賞 演劇 中村勘九郎 「梅雨小袖昔八丈」(国立劇場4月公演)において、歌舞伎の伝統と芸系を継承しつつも、人間の感情、感覚の深層を的確に把握して、新たな人物像を格調ある演技で表現し、優れた舞台成果を挙げ、芸境の高さをして一段と業績を高めた。
優秀賞 伝統芸能 鶴澤清治 第一人者である越路大夫の三味線として、若年より活躍し、責任を果たしてきた。抜群の天分、技芸である。昭和63年は、「神崎揚屋」「十種香」「封印切」など。広く作曲にも才能を発揮している。
優秀賞 伝統芸能 栄芝(春日とよ栄芝) 日本の今の音楽界にとって最大の問題は、日本の新しい歌をどのような形にすべきかということである。栄芝はそのことに深く思いを致し、小唄端唄の従来の歌を現代の人々にも深く共感してもらえるような美しい説得力ある歌い方で歌うだけでなく、新しい歌に積極的に取り組み、ジャンルを越えた新しい日本の歌のあり方に貴重な成果をあげてきた。
優秀賞 伝統芸能 上原まり 幼少より母・旭堂の指導を受け、宝塚歌劇団退団後、演奏活動に専念。平曲を現代感覚でアレンジして、東京、大阪など各地で活発にリサイタルを開き、新しいファン層を開拓して琵琶の普及と大衆化に貢献した。
優秀賞 歌謡芸能 小林幸子 発表から2年にわたり、「雪椿」が大ヒットし、各音楽祭でロングセラー賞、特別賞などを受賞、不振と言われた大衆歌謡部門の中にあって、ひとり気をはき、健闘した。また、新宿コマ劇場公演では、それまでの当劇場入場記録保持者であった美空ひばりの記録を更新するなど、舞台でも活躍、歌手生活25周年の長きにわたり苦道に励み実績をつんでいることは称賛に価する。
優秀賞 テレビ・映画 中井貴一 映画、テレビ等映像分野の活躍は目ざましいが、とりわけてNHK大河ドラマ「武田信玄」の主役に起用され、風格の大きさを加えて演技者として、いちだんと成長を示した。映画「連合艦隊」でデビュー以来、7年間のたゆまぬ精進によって、可能性をつぎつぎに開拓、今後への期待を募らせている。映像芸術の現代の旗手として、「武田信玄」は一つの大きな節目にあたり、その難関を越えたところに注目するべきものがある。
特別賞 伝統芸能 竹本越路太夫 文楽・太夫の第一人者。その語りは精緻、絶妙で、人物、状況を浮き彫りにする。昨年の「二月堂」「封印切」「十種香」「神崎揚屋」は、どれもが観客を魅了した。同時に彼の存在が近年の文楽を支えてきた功績は大きい。現在高い芸境にある彼が、自己の決断により本年上半期に引退し、その後は後進の指導に力を尽くすこととなった。惜しむ声が高いが、誠にみごとな”人と芸”である。
特別賞 伝統芸能 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館 館長 鳥越文蔵氏 昭和3年10月に開館した早稲田大学・坪内博士記念演劇博物館は、60年記念を迎え、その間図書13万3千冊、芝居絵2万5千枚、博物5万1千500点、写真22万枚に及ぶ資料を整理、保存。加えて世界各地での館外展覧会をしばしば行い、同館内でもシェイクスピア祭、逍遥祭、演劇講座、芸能鑑賞会を開いて、日本唯一の博物館として演劇文化の発展に寄与している功績は大きい。今日では世界有数の演劇博物館として認められている。
新人賞 演劇 市川右近 梅原 猛作・市川猿之助台本演出「伊吹山のヤマトタケル」での演技。同作品は、同じ作者による「ヤマトタケル」でカットされた未上演の部分を中心に原作を再構成したもの。青年ヤマトタケルの客気と悲劇を巧みに表現し、演技者として将来への可能性を示した。同時にそれは同世代に属する若手歌舞伎俳優全般の、新しい分野への挑戦の可能性を示したものでもある。
新人賞 歌謡芸能 坂本冬美 低調な歌謡界にあって、デビュー以来、「あばれ太鼓」「祝い酒」と続けてヒットを出した。また、歌唱力もあり、今後の歌謡界で輝き続ける人である。